好きな色の一つに「朱色」があります。 神社の鳥居、習字の先生が使う墨汁、日本庭園で見かける橋の欄干、夕焼け、紅葉で染まったもみじやかえで。 朱色は一見派手な色にも思えますが、じっと見ていると吸い込まれそうで、私の中では静寂の色です。 愛媛県松山市にある「伊佐爾波神社」は朱色に染められた社殿がとてもきれいでした。 社殿は全国でも3例しかない「八幡造り」という様式で、2棟の建物を前後に連結させてひとつの社殿にしているのが特徴です。 訪れた時間も絶好の時間帯で、沈む太陽の朱色が社殿を照らしていたこともあり、まるで美しい絵画の中を歩いているような感覚になりました。 太陽の陽ざしが届いている時間帯がカラフルな世界だとすれば、陽が沈んだ夜の時間帯は光と影のコントラストの世界。 そして、夕暮れ時はあたり一面が朱色一色に染まる単色の世界。 ほんの一瞬で消えてしまう単色の世界の時間帯に訪れることができたのは偶然でしたが、伊佐爾波神社の最大のパワーを全身で浴びた気分になり、とても爽快でした。